何より大事なことは、顔を合わせて話をする“ご近所とのお付き合い”

三宿にお店を構えて25年のフレンチレストラン「シーブリーズ」。親子で切り盛りする「隠れ家レストラン」は、お店の入れ替わりが激しい三宿エリアではもはや老舗の風格を感じます。二代目シェフの菅井朝哉さんは、お店の営業のかたわら当商店会の副会長をつとめ、お子さんの小学校のPTAでも活躍する行動派で、その明るいキャラクターはいつも周りを笑顔にしてくれます。そんな生粋のムードメーカー菅井さんに、三宿の魅力と商店会の活動についてうかがいます。

Q:オープンから25年ですが、三宿エリアとの関わりはずいぶん長いですね。
A:お店もそうですが、私自身も三宿は生まれ育ったまちで、生活の場、働く場、子供を育てる場でもあるので、とても愛着を持っていますね。三宿は三軒茶屋や中目黒からも近いですが、これらの繁華街とは少し違って、住宅やお店、公園がそろう落ち着いて暮らしやすいまちだと思います。オープン当時は三宿が盛り上がっていた時期で、落ち着いた大人向けの隠れ家エリアとして人気でしたが、最近ではご夫婦やファミリー層が多いように感じます。実は、オープン当時は大人向けを意識していたこともあって、お子様のご入店をお断りしたり、夜遅くまで営業していたのですが、最近ではご家族連れや若いカップル、ご年配の方々など、幅広い層に気軽にフレンチを楽しんでもらえるような雰囲気を意識するようになりました。

Q:昔と比べるとだいぶ変わりましたね。最近の三宿エリアにはどんな印象をお持ちですか?
A:まちの規模自体は小さいと思いますが、集まるお店は商品やサービスにこだわった専門店が多いですね。三宿に住む方も遊びにくる方も、食やライフスタイルに対する意識が高い方が多いので、このことが専門店を増やした理由じゃないかと思います。そうしたお店とお客様の雰囲気もあって、まち全体に「品の良さ」を感じます。ただ、最近は少し空き店舗が目立つことも気になっています。お店をもっと増やして、もう一度昔のような盛り上がりを見せたいですね。

Q:三宿のまちを盛り上げようと様々な活動をおこなっている商店会ですが、来年で丸10年を迎えますね。
A:そうですね、あっという間の10年でしたね。私は設立当初から参加してきましたが、気づいたら副会長になっていました(笑)。メンバーもだいぶ入れ替わりましたが、本当にみんな良い仲間で、プライベートでも食事をしたりしています。それぞれ異なる業態のお店が集まっているので、経営やマーケティングの話が聞けることはとても参考になるし刺激にもなります。また、いくつかのお店では協働で商品開発やイベントもやっていて、そうした点も商店会という組織の魅力でしょうね。

Q:ここ数年、「世田谷パン祭り」をはじめ、世田谷公園でのイベントを多く開催していますね。商店会の認知度も上がったのではないでしょうか?
A:地域にとっても商店会にとっても、世田谷公園の存在はとても大きいですね。住宅地のなかにあれだけの広さとゆたかな緑があることは、とても貴重なまちの宝だと思います。商店会として、世田谷パン祭りは第二回(2012年)から公園を使わせてもらっていますが、今年(2018年)から新たに「三宿さくらマルシェ」「三宿十の市」というイベントを開催しています。これらのイベントは、地域の方々とつながるきっかけにもなるのでとても大切な機会ですが、商店会が開催しているということは実はあまり知られていないのです(笑)。まだまだ努力が足りないということですね。世田谷パン祭りは、今では2日で5万人も来場する大イベントになりましたが、これがきっかけで商店会の知名度もかなり上がったと感じています。ただ、商店会の各店舗の知名度や集客につながっているかというとまだまだ課題はあります。
また、2年ほど前から世田谷公園でキッチンカー営業ができるようになりました。当店も、より気軽にフレンチを楽しんでもらえるように、キッチンカーの出店をはじめました。もちろんお店のPRが目的ですが、営業を通じて色々なお客様との会話のなかで商店会を知ってもらうように意識はしています。都内でも、日比谷公園や南池袋公園などでは、様々なイベントを催してたくさん人が集まっていますが、世田谷公園でもしっかりと魅力的な環境を用意してあげれば、あとは勝手に人のつながりが広がるものだと思っています。

Q:副会長というお立場として、今後の商店会の活動について聞かせてください。
A:商店会の加盟店は、各店で営業時間や会社の規模、参加意識もそれぞれ違うので、なかなか足並みをそろえることが難しいのですが、それぞれができる範囲で一緒に同じ方向を向いて活動するということが大切だと感じています。まずは、世田谷パン祭り、三宿さくらマルシェ、三宿十の市といったイベントを継続することと、そのなかで少しずつイベントのクオリティを上げていくことを目指したいと思います。また、今後については、たとえば毎週日曜にみんなで公園に集まり朝食を楽しむイベントを開催するなど、地域の人たちが気軽に参加して一緒に楽しみ交流する機会をつくりたいと思っています。

最後に三宿に対する思いを聞かせてください。
A:子供が通う学校のPTA活動や地域イベントなどに積極的に参加して気づいたことは、やはり地域のみなさんと顔を合わせて話をするお付き合いが大切だということでした。外からのお客様ももちろん大切ですが、「地域の人=お客様」であり、まずは地域のみなさんとのつながりが何より大事だと感じています。こうした地域とのつながりを広げながら、地域のみなさんと一緒に三宿のまちが盛り上がるようにしていきたいですね。

文・インタビュー:御代田和弘(4FRAMES/MISHUKU R.420)